ワンデイインプラント®とAll-on-4

インプラント治療には、患者様の症状やご希望に合わせたいくつかの選択肢があります。一般的なインプラント治療は、失った歯1本ごとに人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する方法です。

しかしこの方法では、総入れ歯の方・ほとんどの歯を失った方などには、大変な時間と費用、体力的な負担がかかる上、長い期間歯の無い状態で過ごしていただかなければいけません。
そのため、インプラント治療を諦めてきた方も多いのではないでしょうか。

そんな方のために開発されたのが、上下それぞれのあご全体の人工歯12本分を4~6本のインプラントで支え、装着までの時間も最短当日と、患者様への負担をできるかぎり軽減した治療法です。その中にもいくつか種類はありますが、一般的によく知られているのは「All-on-4」の名前で呼ばれている技法です。一方で当院では、より汎用性の高い「ワンデイインプラント®」という独自の技法で治療を行っております。

これらの治療は、根本のコンセプトは概ね同じながら、手術の手順や使用するインプラントなどのルールには異なる点があります。しかしよく似た治療法なので、歯科医師の中でも混同されている場合もあるようです。患者様にはなおのこと、わかりにくいことでしょう。
ここでは、もっとも一般的な「All-on-4」と、当院が行っている「ワンデイインプラント®」について、インプラントの基礎的な知識とともに、その共通点や違いなどを詳しくご紹介していきます。

歯科インプラント治療が誕生するまで

「インプラント」とは、失った身体の機能を補うために、体内へ埋め込む人工物の総称です。歯科インプラントもその代表ですが、骨折をつなぐチタンプレートや人工内耳、人工心臓弁などもインプラントの一種です。
それらの中でも歯科インプラントの歴史は古く、明らかなものでは紀元数世紀にまでにさかのぼります。その頃の遺跡からは、失った歯の部分に動物の骨や貝などが埋め込まれた頭骨が発掘された記録が残っているそうです。歯科インプラントは、歯を失った古代の人々が「何とか噛めるようになって生き抜こう」と、必死の思いで編み出した工夫とも言えるのです。
その後も、鉱石や金属など、様々な材料で歯を補おうという試みがなされていきますが、生物の身体は異物を簡単には受け入れてはくれません。一時的に埋め込めたとしても、骨と結合しにくいため安定せず、アレルギーが生じてしまうこともあったと思います。

しかし、チタンという金属が、生体との親和性が極めて高いことが発見されて以来、歯科インプラントは本格的な治療法として、飛躍的な発展をとげることとなったのです。
純度の高い医療用チタンは生体に異物反応をおこさず、骨に埋め込めばその一部として結合してくれます。その研究が進んでからは、歯科インプラントの技術は確実に進化し、現在の成功率は97%程度とも言われています。
チタンの優れた性質を発見したのは、スウェーデンのブローネマルク教授でした。1952年のことです。その後教授は研究に研究を重ね、1965年には、実際の治療現場で初のインプラント治療を行いました。そのときに治療を受けた人は2006年に亡くなりましたが、埋め込まれたインプラントはそこまでの41年間、機能し続けたそうです。

こうして、チタン製インプラントの素晴らしさは世界中に伝わり、広く普及するようになりました。その後もより安定した成功率を高めるための研究は進み続け、骨に埋めた直後のインプラントに強い力がかかると結合しにくいことがわかりました。そこで2回法と呼ばれる方法が生まれたのです。インプラントを埋めた後に一度歯肉を閉じ、骨との結合が確認できる3~6カ月待って、再び歯肉を開いて人工歯を取り付けるための接続部分をとりつけます。現在は1回法が可能なインプラントや技法も開発されてはいますが、一般的には2回法が多く行われています。

あご全体を4本のインプラントで修復する治療の誕生

2回法で行う一般的なインプラント治療は安定感もあり、優れた方法です。インプラントが人工の歯の根となり、その上に人工歯を装着することで天然の歯と同じような構造を再現できるため、よく噛め、見た目にも自然に仕上がります。しかし、数本の歯であれば、とても有効な治療法でも、多くの歯を失った患者様にとっては、3~6カ月(場合によってはもっと長くかかることもある)もの期間、歯のない状態でいることは耐え難いことでしょう。また、インプラントで1本ずつ歯を再現するために、片あご全体では10本前後と多くの本数を埋める必要があり、非常に大がかりな治療になって、身体への負担も経済的な負担も大変なものとなっていました。
そのため、受けられる方が限られてしまい、インプラント治療を望みながらも諦めざるを得ない方がたくさんいたのです。

多くの歯を失った人でも、できるだけ負担を少なくして、インプラント治療を受けていただきたい、という機運が世界で起こり、その研究が歯科医師やインプラントメーカーによって進められました。

やがて

  • あご全体にバランスよく配置すれば、4~6本程度であご全体(12歯分)の人工歯を支えられる
  • 骨に埋められたインプラントが骨結合するまでの間は、強過ぎる外力は骨結合を阻害するが、程よい力なら逆に骨結合を促進できる

という研究結果から「イミディエート治療法」が誕生しました。
イミディエートとは、「即時」という意味です。インプラントの埋入と同時に仮歯を固定する方法で、イミディエート・ローディング(即時荷重)や、イミディエート・ファンクション(即時機能)と呼ばれることもあります。

All-on-4とは

イミディエート治療の開発後、各インプラントメーカーや歯科の研究者たちは、より高い確実性や安全性を追求して研究を進め、いくつかの術式を生みだしていきました。その中でも一番広く知られるようになったのは、ドクター・マロが提唱した「All-on-4(オール・オン・フォー)」です。
これは、「あご全体の歯12本分すべて(オール)を、4本[上あごでは6本のケースもある]のインプラント(フォー)に、のせる(オン)」という治療内容をわかりやすく表した名称です。
All-on-4の大きな特徴は、奥歯部分の骨が薄い場合であっても、インプラントを斜めに埋めることで骨造成はしないですむという点にあります。奥歯部分は上あごには上顎洞、下あごには太い神経があるため、インプラントを埋める厚みが確保しづらくなっています。

そこで、All-on-4では、インプラントを斜めに埋める(傾斜埋入)という技法が編み出されました。これによって、上顎洞や神経の位置を避けることができ、なおかつインプラントの長さだけの骨の厚みも確保でき、しかも12歯分の人工歯をバランスよく支えることができるようになったのです。

All-on-4は、この技法以外にも様々な細かいルールが定められ、使用するインプラントや材料もノーベル・バイオケア社の専用製品に限定されています。歯科医師がそれらのルールを学んでいけば、治療に取り組みやすいようなシステムになっているのがAll-on-4の特徴とも言えるのです。
世界でも代表的な老舗インプラントメーカーのノーベル・バイオケア社によるセミナー開催などの後押しもあり、All-on-4はイミディエート治療の代名詞的な存在となり、広く知れわたるようになりました。
そして、これによって救われた患者様が多くいらっしゃいます。

ワンデイインプラント®とは

以上のように、All-on-4は多くの歯を失った方にとって、画期的な治療法となりました。しかし残念ながら、極端にあごの骨が薄くなっている患者様のケースには、対応ができないという限界があったのです。長年総入れ歯を使用してきた患者様はあごの骨が大変痩せてしまうことも多く、All-on-4の傾斜埋入の技法でも治療が困難な場合があるのです。
とくに、上あごは元々薄い構造をしているため、骨吸収が激しいときはAll-on-4でも困難な状態になることも珍しくはありません。
このような患者様の場合、やはりインプラント手術の半年~1年前に骨移植の手術を受けるか、インプラント治療そのものを諦めるか、どちらかの選択肢しかありませんでした。これでは骨の薄い患者様にとっては、イミディエート治療が開発される以前と変わらない状態です。

そこで、「骨が極度に薄くなってしまった方にも、イミディエート治療を可能にできないものか」。そのような強い思いで治療法の研究を進めたのが、当院院長の中平宏歯科医師です。中平院長は、インプラントの埋入と同時に、自家骨や人工骨を用いて骨を増やすサイナスリフト(上顎洞底挙上術)を行う治療法を考え出しました。
この方法であれば、骨造成、インプラントの埋入、仮歯の固定と、3つの過程を1日(ワンデイ)で終えることができるのです。そして、この治療法を「ワンデイインプラント®」と名付け、他のイミディエート治療と区別するために、2006年に商標として登録することとなりました。
また、ワンデイインプラント®では、患者様の骨の質や量に合わせて使用するインプラントメーカーを選択したり、埋入するインプラントの本数も4~6本と幅を持たせたりと、患者様の状態に応じた柔軟な治療計画を立てることができます。
このことは逆に言えば、個々の患者様にあったカスタムメイドな治療を行う高い技術が必要だということです。

手術を行う前の治療計画の段階で、患者様それぞれの骨質や骨量をしっかりと見極め、状態に応じた治療計画を立てる高い診断力も備えていなければいけません。また、インプラント埋入とサイナスリフト術を同時に行うため、かなり高度な技術が必要です。
そのため、ワンデイインプラント®は歯科医師なら誰もが行えるというものではありません。難しい症例も含めた数多くのインプラント症例を扱ってきた豊富な実績と、そこから培われた高い技術力や深い知識があってこそ行える治療です。

ワンデイインプラント®️とAll-on-4(オールオンフォー)の比較

ワンデイインプラント® All-on-4(オール・オン・フォー)
埋入本数 4〜6本 4本(上あごに限り6本の場合もある)
骨造成術 サイナスリフト骨造成
(臼歯部も固定ができる)
骨造成は無し
(遠心部インプラントの傾斜埋入)
初期固定値 低い初期固定値でも技術力がカバー 35〜45Ncm
使用メーカー 幅広い選択肢 ノーベル・バイオケア社
ワンデイインプラント®
埋入本数 4〜6本
骨造成術 サイナスリフト骨造成
(臼歯部も固定ができる)
初期固定値 低い初期固定値でも技術力がカバー
使用メーカー 幅広い選択肢
All-on-4(オール・オン・フォー)
埋入本数 4本(上アゴに限り6本の場合もある)
骨造成術 骨造成は無し
(遠心部インプラントの傾斜埋入)
初期固定値 35〜45Ncm
使用メーカー ノーベル・バイオケア社

ワンデイインプラント® の特徴

サイナスリフト法と即時荷重治療法の併用

ワンデイインプラント®最大の特徴は、「サイナスリフト法(自家骨や人工骨を移植して骨を厚くする方式)」と「即時荷重治療法」とを併用することです。
歯を失った後は歯槽骨の吸収がおこり、だんだん骨が減って厚みが無くなっていきます。
特に上あごの奥歯のあった部分はインプラントを埋めようとしても、骨が薄すぎて十分な深さを確保できなくなってしまっていることがあるのです。そのようなケースでも、サイナスリフト法を併用すれば、骨の厚みを増した上でインプラント治療が行えます。ワンデイインプラント®は、骨吸収の激しい患者様や、骨質が粗い患者様などの難症例に対しても治療が行える可能性があり、All-on-4では対応できなかった方に「抜歯→骨造成→骨整形→インプラントの埋入→仮歯の装着」までの過程を、1 日(ワンデイ)で叶えた症例もございます。

また、ワンデイインプラント®️では、安心・安全かつ効率的な治療が行えるよう、術中や術後はもちろんのこと、インプラントから人工歯などの補綴物に至るまで、しっかりとした基準を設けています。
さらに、術前のカウンセリングから術後のメンテナンスまで、総合的な治療計画を設定し、患者様もご納得の上で治療への協力をしていただくことで、多くの方々の治療を成功へ導いています。

東京銀座歯科ならではのワンデイインプラント®

ワンデイインプラント®では、患者様それぞれの症例に応じて対応するためのシステムを確立しています。これにはより高度な専門性と技術力、豊富な経験による深い知識が求められるため、歯科医師なら誰でも簡単に取り組めるというものではありません。

その安全性や高水準の結果を維持するために、現在は当院、および中平院長の出向提携医院のみが行う治療となっています。難易度の高いインプラント治療の第一線で活躍し、十分なノウハウを培ってきた当院だからこそ実現できるワンデイインプラント® 。その成功率は、安定した高水準を維持しております。